壮絶なアニメーションが完成した。劇場用作品『シックス・エンジェルズ』である。物語は、5人の美女が強大な力同士の抗争の中に叩き落とされるところから始まる。物語の中で徹底して描かれるテーマは「暴力」、そして「人間の力」。それは否定でもあり肯定でもある。暴力を見る爽快感、そこにはらむ危険性。暴力をふるわれる痛み、怒り。そして正義も悪も、用いる手段はあくまで暴力であること。息付くひまも無く繰り広げられるバトルシーンの連続は、危うく甘い「暴力」を描き続ける。

 想像を超える策謀と、国家反逆の戦いのまっただ中にほうり込まれた人間たち。そのとき、自分であったならいかに行動できるのか? 地球規模で進む破滅の足音に対し誰もが抱く危機感を、他の誰が食い止めることができるのか? 矮小な力の否定、希望を持つことの力の肯定。そして、第三の火=力を手に入れた人間。「人間の力」はどこまでのコトができるのか? それは総監督である小林誠自身のテーマでもあるという。

 舞台は近未来。それだけに出てくる武器、銃器、航空機、その他さまざまなガジェット類は、見たことあるようでまったく見たことのないデザインである。それらすべてをコーディネイトし、世界観を作り上げたのは、本編の総監督も務める小林誠だ。小林は『機動戦士Zガンダム』と『機動戦士ガンダムZZ』のメカニックデザイン(コンセプトデザイン含む)や、『ジャイアントロボ THE ANIMATION〜地球が静止する日』ではメカニックデザインだけでなく、世界観をあらわすイメージボードなども手掛けた、稀代のビジュアルクリエイターである。またその手腕は平面世界だけにとどまらず、立体(3D)世界でも発揮される。前述の『ガンダムZZ』などでは、デザイン決定に難航していた主役メカを、デザインと同時に変形する立体物を製作し、スポンサーを納得させてしまったという。


また、模型雑誌『電撃ホビーマガジン』では、自身のプロデュースによる、独自のガンダムワールド『ソロモンエクスプレス』を不定期連載している。立体造形の腕前は、そのまま3DCGに移行し、本編オープニングのヘリコプターの大戦闘シーンは、小林自身が描いたものだという。そんな小林の独自の確固たる世界観は、原作と監督を務めたOVA『ドラゴンズヘブン』('89)や、本作『シックス・エンジェルズ』でも、いかんなく発揮されている。

 画面を激しく動き回る魅力的なキャラクターは、『天使になるもんっ!』の美少女キャラクターデザインで多くのファンを魅了した加藤裕美が担当している。ゴツイ銃を手に戦う可憐な美少女と、狂気をはらんだ敵キャラクターとの融合は、本作がいわゆるベタな美少女モノではない証拠だとも言える。

 バトルもの、メカものである本作だけに、目を引くのがメカニック演出であろう。ここでは『トップをねらえ!』や『新世紀エヴァンゲリオン』などで、力強く印象に残る爆発エフェクトの演出を務め、「爆発の増尾」と異名を持つ増尾昭一が担当している。デジタル全盛の現代のアニメーションシーン(もちろん本作もデジタル作画シーンもあり、3DCGで描かれたシーンもある)に、あえてセル画を多用した戦闘、爆発シークエンスを盛り込むことで、画面に圧倒的なパワーを与えることに成功している。

 その画面のパワーを増幅するのが音楽だ。『ジャイアントロボTHE ANIMATION〜地球が静止する日』の天野正道が担当している。勇壮で重々しい調べが、世界観に厚みを加えていることは、言うまでもないことだ。

 脚本には、『神 八剣伝』や『太陽の勇者ファイバード』『伝説の勇者ダ☆ガーン』『電光超人グリッドマン』など、多方面で活躍する平野靖士が担当している。『シックス・エンジェルズ』の本編は、テレビシリーズのようにいくつかのパートに分かれている。インターネットの放映とは異なる部分として劇場版では、音響、効果音をグレードアップし、ネットにはない未公開シーンを加え編集することで「一本の作品」としての体裁を取っているが、エピソードごとにサブタイトルが入るのがその名残だ。こうすることによって、連続モノのような起承転結が繰り替えす構成になり、約1時間半の劇場作品に留まらない、世界観全体の広がりが生まれ、圧倒的なスケール感で我々の前に物語が展開されるのである。



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